ログインするとすべての記事が読めます

メタボが気になる! 脂質の検査から見えるコト

メタボが気になる! 脂質の検査から見えるコト

第4回 遊離脂肪酸

内臓脂肪が増えると、遊離脂肪酸の悪循環を生む

[2014/08/21]

遊離脂肪酸は、アディポサイトカインという脂肪細胞から分泌される生理活性物質と同様に糖尿病や肥満に関係しています。
このアディポサイトカインには、善玉と悪玉があります。善玉のアディポサイトカインは、動脈硬化を防ぎインスリン抵抗性を改善する働きがありますが、悪玉アディポサイトカインは逆に、動脈硬化やインスリン抵抗性を引き起こす働きがあります。
代表的な善玉アディポサイトカインであるアディポネクチンは、内臓脂肪が蓄積すると減少します。その結果TNF-αやPAI-1などの悪玉アディポサイトカインが増加し、インスリン抵抗性、高血糖を引き起こします。
また、内臓脂肪の蓄積により遊離脂肪酸が増加すると、過剰な遊離脂肪酸は肝臓に蓄積して脂肪肝になります。

このように内臓脂肪の蓄積によって、悪玉アディポサイトカインや遊離脂肪酸が増加することでインスリン抵抗性を引き起こします。インスリン抵抗性とは、肝臓や筋肉、脂肪細胞などでインスリンが正常に働かなくなった状態のことで、インスリンは分泌されているけれども、その働きが弱い状態です。そのため血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓の細胞が取り込めない、つまりエネルギーとして利用できずにいるのです。

インスリン抵抗性により糖が利用できなくなると、糖の代わりのエネルギー源として脂肪を分解してエネルギーを作り出そうとします。これによって、さらに脂肪組織から遊離脂肪酸が血中へ放出されインスリン抵抗性を引き起こすという悪循環を生み出します。
このように糖尿病と肥満や脂質異常症には、相互に悪循環を引き起こすような密接な関係があり、中性脂肪や遊離脂肪酸など脂質関連の物質が糖尿病の発症に大きく影響する場合があります。

遊離脂肪酸の検査は、コレステロールや中性脂肪の検査ほどメジャーな検査ではありませんが、脂質関連検査 のひとつとしてみなさんの頭の片隅に記憶していただければ幸いです。

 

著者プロフィール:堀 行雄(臨床検査技師)
2000年インクロムの提携医療機関に入職して以来、臨床検査室で忙しく検体検査をする日々。年間およそ5,000人分の血液を分析。

 

前へ 1 2

教えて!健康コラム

「健康コラム」をもっと見る

新着健康コラム

「新着健康コラム」をもっと見る