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脂質異常症特集サイト/メディマグ. 脂質異常症

脂質異常症とは?

脂質異常症とその治療

脂質異常症の治療とは?

脂質異常症の治療の基本は、1)生活習慣の改善(食事療法・運動療法)と、2)薬物療法の2つです。
特に、食事療法や運動療法を用いて行われる生活習慣の改善は、血清脂質値を下げ動脈硬化の進行を防ぐことにより、狭心症、心筋梗塞、脳卒中など生命に危険を及ぼす疾患の二次的発症を予防する事につながります。

ただし、腎臓病や糖尿病、甲状腺機能低下症、心臓病などの基礎疾患がある場合は、これらの病気をまず治療することが重要です。

生活習慣の改善

5か条
  1. 1食生活の改善 適正エネルギー摂取量=標準体重×25~30(kcal)栄養素配分の適正化
  2. 2適正体重の維持 標準体重=[身長(m)]×[身長(m)]×22
  3. 3適度な運動 1日30分以上、週3回以上を心掛ける
  4. 4禁煙・節酒を心掛ける 禁煙、適度なアルコール量に
  5. 5ストレスをためない 充分な睡眠、生き生きとした生活を

治療目標 血清脂質値

LDLコレステロール値 …………………140mg/dL未満
HDLコレステロール値 …………………40mg/dL以上
中性脂肪(トリグリセライド)値……150mg/dL未満

注意 ※男性45歳以上、女性55歳以上で、狭心症、心筋梗塞、高血圧・糖尿病、肥満、喫煙習慣がある症例では治療目標値が更に厳しく設定される。

出典:動脈硬化性疾患診療ガイドライン2012年版(日本動脈硬化学会)

脂質異常症の治療その1 食事療法

もし脂質異常症になってしまったら、まずは「生活習慣の改善」(食事療法と運動療法)から治療を開始します。なかでも毎日の食事(食事療法)は特に重要。1)摂取エネルギーや摂取栄養素などを適正に合わせると同時に、適正体重を維持する、2)病気のタイプに応じてより制限を厳しくする、の2段階があります。

通常、第2段階は第1段階を行っても血清脂質値が目標値に達しない場合に行われます。

また規則正しい食生活を送ると同時に、喫煙、飲酒、ストレスなど、脂質異常症を悪化させる危険因子を生活から排除することが重要です。

脂質異常症の治療その2 運動療法

食事療法と共に行うのが運動療法。ただし、動脈硬化性の病気の有無により、個人に適した1日の運動量が変わってきます。医師と十分に相談した上、無理のない運動を心掛けましょう。

脂質異常症の治療その3 喫煙・飲酒

また、喫煙者は禁煙を心掛けましょう。たばこは動脈硬化、がん、呼吸器疾患などの併発を促します。

そしてアルコールの摂取量を控えることも大切。もちろん個人差はありますが、1日の飲酒量を日本酒なら1合、ビールなら中ビン1本、ワインならグラス2杯程度に抑えましょう。

飲酒はストレス解消にも役立ちますが、飲みすぎは血液中の中性脂肪値を上げる可能性があります。ストレス解消には、充分な睡眠をとり、適度な運動をすることや、また自分流のリラックス方法を見つけましょう。

脂質異常症の治療その4 薬物療法

通常、脂質異常症治療の第一段階である「生活習慣の改善」を3~6ヵ月程続けても血清脂質値が下がらない場合、薬による治療(薬物療法)を行います。また、薬物療法に入っても食事療法・運動療法は引き続き継続します。

脂質異常症の薬は主に、1)コレステロール値を下げる薬と、2)中性脂肪値を下げる薬に分類されます。いずれも長期間に渡る投与が必要な薬です。医師と十分に相談し、個人の症状に合った薬を服用することが重要です。

主な脂質異常症の薬 LDLコレステロール HDLコレステロール トリグリセライド おもな働き
スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬) 下げる 上げる 肝臓でLDL-コレステロールが合成されるのを抑える
プロブコール 下げる コレステロールが酸化し、血管に付着するのを防ぐ
陰イオン交換樹脂 下げる 脂肪酸が集まって中性脂肪になるのを防ぐ
ニコチン酸誘導体 下げる 上げる 下げる 脂肪酸が集まって中性脂肪になるのを防ぐ
フィブラート系薬 下げる 上げる 下げる 中性脂肪の合成を抑制する
EPA製剤(エイコサペント酸エチル) 下げる 血小板の働きを抑制して固まるのを防ぐ

日本生まれの画期的な脂質異常症治療薬「スタチン」

生化学者である遠藤(えんどう)章(あきら)博士は1973年、アオカビの一種である「ペニシリウム・キトリヌム」から「メバスタチン」を発見する。その後、メバスタチンよりも安全性が高くより効果的である「プラバスタチン」という物質が発見された。
長年に及ぶ度重なる試験でその安全性を確立した「プラバスタチン」は1987年以降、日・米・欧を中心に世界の約70ヵ国で発売されることになる。
以来、さまざまなスタチンが開発され、高コレステロール血症の薬として、現在では世界中で使用されている。

なぜ「プラバスタチン」が脂質異常症に効果的なのか。まず、コレステロールは酢酸から二十段階の酵素反応によって作られる。この過程を阻害して血中コレステロールを低下させる物質がこの「プラバスタチン」なのだ。

もう少し化学的な話をすると、「プラバスタチン」は肝臓で行われるコレステロール生合成の際に不可欠な「律速酵素(HMG-CoA還元酵素)」を阻害する。
その結果、血液中から肝臓へのコレステロールの取り込みが促進され、血液中のコレステロール濃度が低下するというメカニズムになっている。また、これと同時に血清中性脂肪も下げる作用があるという優れものなのだ。

近年の臨床試験によって、動脈硬化に伴う血管壁の炎症を抑える作用があることもわかり、それにより動脈硬化の進行防止・改善、動脈硬化巣の表面の安定化といった効果も明らかになった。
現在では、心筋梗塞や脳血管障害の発症リスク低下に大きく役立っている。

遠藤博士はその化学界への貢献を称えられ、2006年には第22回日本国際賞、2008年にはアメリカのノーベル医学生理学賞ともいわれるラスカー賞を受賞。博士の「カビへの情熱」が、世界の脂質異常症患者へ朗報をもたらしたのだった。

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