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健康コラム

フィトンチッド―ヒノキを代表とする森林の知られざる効果と作用

ヒノキが韓国で大ブーム!日本産のヒノキが人気の理由は?

今、韓国では日本産のヒノキが大ブームになっています。

韓国のテレビ番組で「ヒノキは健康に良い」と紹介されたのを皮切りに、人気に火がつきました。韓国でもヒノキは自生していますが、木材の品質管理が日本ほど徹底されていません。さらに伐採してすぐの水分を多く含んだ状態で木材を利用するため、ひび割れや曲がり、反りが生じてしまうのです。一方、日本では木材を伐採後、乾燥させてから使用しています。そのため、日本産のヒノキをはじめとする木材は、ひび割れなども起きず「質がいい」と評価され、壁や床などの内装材として韓国で使われることが増えたのです。

 

フィトンチッドとは?木から出る不思議な成分

そもそも、韓国で「ヒノキは健康に良い」と言われたのは、どういう理由からなのでしょうか?
森林浴をすると、森の香りに包まれてリラックスできますが、この森の香りは、ヒノキやスギ、マツ、笹などの植物や樹木が作り出す「フィトンチッド」という物質がもとになっています。フィトンは「植物」、チッドは「他の生物を殺す能力」を意味し、直訳すれば「植物の殺菌作用」という意味になります。フィトンチッドには、リラックス効果がある良い香りを発するだけでなく、抗菌・防虫・消臭などの作用もあります。植物や樹木は、防虫効果があるフィトンチッドを作り出して、自らを守っているんですね。
また、樹木が木材として加工されてもフィトンチッドの効果は持続します。そのため、自宅の壁等にヒノキなどの木材を使用することで、家にいても森林浴をしているのと同じようにリラックスすることができます。抗菌・防虫作用もあるため、家のカビやダニの対策にも効果的です。

 

檜風呂やタンスには先人の知恵があった!?

日本では、ヒノキは古くから木造建築に使われてきました。ヒノキは、人を安心させる香りを放つだけでなく強度にも優れています。世界最古の木造建築である法隆寺五重塔に使われ、建築から1500年以上経過した現在も立派に残存していることからもその耐久性の強さをあらわしています。
ヒノキは、反りやねじれなどの変形が少ないことをはじめ、腐りにくく時間が経つごとに強度が増していくという点で、他の木材より優れています。
建築以外でも古くからお風呂や箪笥にもヒノキ材が使用されてきました。防カビ効果があり、強度に優れたヒノキを生活に取り入れていたのは、先人たちがその有益な性質を知っていたからかもしれません。
他にも、ヒノキを利用したものに曲げわっぱがあります。曲げわっぱは、弁当箱内の水分を調節してくれるため、おかずやご飯が傷みにくい特性を持っています。おかずとご飯の間に敷く笹にもフィトンチッドの抗菌効果を期待できますが、これらを昔から利用してきたことにも先人の英知が感じられますね。

 

フィトンチッドには抗アレルギー作用も!

ヒノキやマツなどの樹木が発するフィトンチッドには、科学的なデータは得られてはいないものの抗アレルギー作用があることも示唆されています。
花粉症や、アトピー性皮膚炎の人にフィトンチッドを希釈した水溶液を噴霧すると症状が改善したとの報告があります。これは、皮膚や粘膜の表面が保湿されたというよりも、フィトンチッド成分によって皮膚の細菌バランスが整えられたためと考えられています。
また、フィトンチッドを吸い込むと肺の繊毛が活性化され、空気中の埃を除去しやすくなるとも言われています。林業に携わっている人に花粉症が少ないのは、このためだという説もあるようです。

 

ヒノキやマツ等の樹木から発生するフィトンチッドは、心をリラックスさせるだけでなく、抗菌や防虫作用など健康にも恩恵をもたらしてくれます。家具や壁材、そしてお弁当箱などでヒノキを取り入れて、フィトンチッドの効能を実感してみてはいかがでしょうか。